男の秘密
「ありがとう。木戸さん。無理言ってごめん」

「何言ってるんだ。今まで一度も無理を言った事ねぇお前が、今回は譲れねぇって言うんだ。無理じゃねぇ」

事務所に入った時から木戸が忍のマネージャーで、寝食も苦楽も共にしてきた。

一番の理解者で、兄のような存在だと忍は思っている。

その木戸にかけられた言葉に、胸がつまり、言葉が出ない。

「そうそう、明日のスケジュールだが・・・」

RRR・・・

沈黙を破って木戸が話し出した時、電話が鳴った。

「はい。木戸だ」

カーナビのモニターに映し出された文字は、森田という名前だった。

森田は木戸の後輩にあたるマネージャーで、今売り出し中の新人についている。

「木戸さん聞いてください!」

車内に響き渡る大きな声に、慌てて音量を低くする。

「何だ、煩ぇな」

「あ、すみません、今入った情報で、神田亜里沙が引退するそうです」
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