男の秘密
病院に着いたら夕方だった。

病室に入ると優はソファーに腰掛けて本を読んでいた。

「優」

声をかけると、本に集中していた所為か、少し驚いたように読んでいた本から視線を忍に移した。

「お疲れ様。コーヒー入れようか?」

ふわりと笑う優につられて忍も笑顔で頷いた。

本をテーブルに置いて、コーヒーを入れる為にキッチンに向かう。

病室にキッチンを完備していて、しかも高級な豆やサイフォンまで置いてある。

先ほどまであんなに疲れていたのに、現金なもので優の笑顔をみたら疲れが吹き飛んだ。

ソファーに腰掛けると、会見前に思い出していた朝の会話の続きを思い出した。


----- 忍さん。私ね。忍さんが日本を離れるって言った時、婚約の事は白紙に戻るかもしれないって思ったの。

----- それで、凄く不安になったんだけど、よく考えてみたら、私、忍さんと離れるって選択肢が無かったの。

----- だから、忍さんが日本を離れたら、私も付いていこうと思って。

----- 連れて行ってくれますか?

あっけらかんとした言い方に、面食らったが、昨日の自分の発言をちゃんと考えて、優なりの答えを出したのだと思うと嬉しかった。

----- さき越されたな。

----- 俺が、付いてきてって言うつもりだったのに。

----- 不安にさせてごめん。

そう言うと、優は泣き出してしまい、忍は優を抱きしめて、頭を撫でた。

そこでコーヒーのいい香りに、現実に引き戻された。

優の入れてくれるコーヒーを飲み、一息ついた忍は、昨日は時間が取れなくて、これからの事を話し合えなか事を話そうと思った。
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