One more kiss
ただただ呆然とする私とは対照的に、そう言葉を発したあと、サヤカさんは憤慨したまま言葉を繋いだ。


「おっかしいと思ったんだよね、あの子。ウォーキングは素人くさいし、ポージングはしょぼいしバリエーションは少ないし、それに、モデルという仕事に対しての意気込みを聞かれた時だって、どこかで聞いた事があるような、もう散々使い古されたネタを一生懸命覚えてきました、って感じのスピーチで、全然自分の意見ってものがなかったのに番号が呼ばれていたからさ」

「でしょ?」

「『え。よりによってこの子が残るんだ…』って、素でびっくりしちゃったわよ。あんなのをグランプリにしちゃって大丈夫なのかしら」

「そこは『荒削りな中にも、他とは一線を画するキラリと光る若い才能が』とか何とかそれらしい事を言って、力業で世間を納得させるんでしょうよ」


サヤカさんの辛辣な感想を受け、ユミさんは憎々しげな口調で解説した。


「一般の人は『そういうもんなのか~。プロの感性は違うな~』って思っちゃうだろうし、業界内の人間は何となく真相を察知はするだろうけど、わざわざ『デキレースなんでしょ?』なんて関係者や本人に問い質したりはしないだろうしね。そんな事したら自分の立場が危うくなるもん。それにあの子、モデルとしての資質はひとまず置いといて、顔は可愛いからそれなりにファンは付くだろうし」
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