恋色シンフォニー
数年経た今では、思う。
こういう奴を腹黒い、というんだと。

あらやだ。
自分、ひねくれてきたのかな。

経験を積みたくて、元彼に釣り合うように歳をとりたくて、背伸びしてきたせいか。

小さくため息をつき、窓の外を見る。
外は夕暮れ。
すこし前まで、この時間は真っ暗だったのに。
ああ、日がのびたなぁ。
3月。
もうすぐ春がやってくる。
私の人生を変えた季節が。



「以上で終了します。お疲れ様でした」

三神くんの締めの挨拶で、会議終了。
みんなわらわらと会議室から出ていく。

「橘、ちょっと」
店舗運営部の一期上の、平野さんに呼び止められた。
「T駅前店なんだけどさ、競合に化粧品の客とられてるんだよ。ポイントとか、美容部員派遣とか、何か手を打ちたいんだよな。何かない?」
「そうですね、それもいいですけど、新製品お試し会とか、お手入れ会とか、イベントやってみませんか。あそこ、店長もチーフも、そういうの上手ですし」
「お、いいじゃん! な、この後、メシ食いながら打ち合わせしねえ?」
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