恋色シンフォニー

3か月前に、社内恋愛していた彼と別れた。

5歳年上の彼と、3年、付き合った。
出会ったのは、4年前。今の渚ちゃんと同じ24歳。
店から商品部に来たばかりで、右も左もわからなかった。
そんな私に、同じ課の先輩が、親切に教えてくれた。
彼がものすごく仕事ができる人だと思って、尊敬して、憧れて、恋心を抱いた。

付き合うようになった時には、天にも昇る気持ちだった。

早く彼に追いつきたくて、夢中で仕事を頑張った。
生活は、仕事と恋愛。
家事は最低限。趣味はなし。

そうして3年たち、ある程度仕事の経験を積んで、気づいてしまったんだ。

彼は、仕事を、できるように見せるのが、上手いんだということに。

悪気があるわけじゃない。
男のプライドが、そうさせているんだと思う。

気づいてしまった時期と、気持ちがすれ違い始めた時期は、ほぼ同じで。
束縛されるようになり、意に沿わないことをすると冷たくされ。
好きなのに、どうしたらいいのか、わからなくなって。
次第に関係が冷えていき。

ほどなくして、彼は成績がふるわず、店に行くことになった。
でもバイヤーとして取引先からちやほやされていたところから、気苦労が多くて体力もいる店長になることは、プライドが許さなかったんだろう。

会社を辞めた。
同時に、別れた。
今は東京で働いているらしい。

彼を人間として本当に好きだったら、弱い面も含めて、丸ごと愛せたんだろうけど。
恋はしていても、愛せていなかったんだと気づいたのは、少ししてからのこと。

なんて嫌な女だろう。
恩人が、恋人が、苦しい時に、力になれなかった。
未だに思い出すと苦しい。
自業自得だ。
こんな私には、しばらく、恋愛をする資格はない。
特に、社内恋愛は。
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