恋の指導は業務のあとに


「へえ、そうなんだ。じゃあ、琴美もいい人が捕まえられるかもね!」

「ん、私には彼氏がいるからいいわ」


琴美は手をひらひらと横に振って、イケメンにはあんまり興味が無いと言う。


「普通の優しい人がいいわ」

「そっか、彼氏が素敵な人なんだ。いいなあ。付き合いは長いの?」

「うん、同じ大学に通ってたの。彼とはもう三年になるわ。ね、そういえば、若葉の上司もすごいカッコイイって先輩に聞いたよ。でね、その先輩が狙ってるの。私、“手を出さないでね”って釘刺されちゃった。そんな気全然ないのに。若葉から見てどんな感じの人?」

「んー、厳しい人だよ。でも確かに顔は良いし背も高くてカッコイイと思う。仕事も出来そうだから将来有望な感じ」

「そうなんだあ。若葉はその人に指導を受けるんでしょ。先輩は牧田さんっていうんだけど、綺麗だけどツンとしてて性格がキツそうだから、気を付けたほうがいいよ。嫉妬してイヤミとか言われるかも。受付にいるから、逐一チェックされそうだし」

「うん、ありがとう。気をつけるね」


寿退社予定の女子社員の隣にいた人、肩まである栗色の髪がゆるふわカールで、可愛いというよりも綺麗な感じの人だった。

あの人が羽生さんを狙ってるんだ。

でも、気を付けると言ったものの、具体的にどうすればいいのだろうか。

指導を受ける立場上、羽生さんとは一緒に行動するのだろうし、営業に出掛けるときは嫌でも受付けの前を通る。

これは、どう頑張っても避けようがないことで・・・。

羽生さんには彼女がいるっぽいけど、牧田さんにはそんなこと関係ないんだよね、きっと。

社会人生活は、前途多難な気がした。


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