恋の指導は業務のあとに
「どうっすか、そろそろ仕事には慣れてきましたか」
「まだ慣れないです。戸惑うことばかりで、羽生さんの後を付いて回るのが精一杯です」
「まあまだ始めたばかりですからねぇ。主任、厳しくないっすか?あ、女子には優しいのかな」
「そんなこと無いですよ。いっぱい叱られていますもん」
泣いていた男の子を宥めたあのことも、実は車の中でしっかり叱られている。
ああいう場合は、店員に知らせるべきだと、何かあったら責任が取れないから手を出してはいけないと言われたのだ。
「今日だって事前準備がしっかりできていないと言われました。基本的なことだぞって、目をこーんな風に釣り上げて」
目じりに指を当てて怖い顔を作って見せていると、最奥の上座にいる羽生さんと目が合ってしまった。
「あ・・・」
慌てて顔を元に戻すけれど、テーブルに肘をついてこっちを睨むようにしている。
怒らせちゃったかも・・・。
背筋に冷たいものが走って、それをごまかすようにビールをぐいっと飲んだ。
ううう、やっぱりビールは苦い。
「でも俺、主任を尊敬しているんですよ。営業力が半端ないんです。TUJIMOTOは企業ノベルティや知育雑誌の付録制作もしていて、その契約を取るのが俺達の仕事でもあるんです。その成績、主任はいつもトップ。そんな主任に指導が受けられるってラッキーですよ」