恋の指導は業務のあとに

「カンパーイ!」


身を乗り出すようにしてあちこちから手が伸びて来て、私の持つジョッキにカチンと合わせる。

ここは会社から車で10分ほど離れた場所にある居酒屋さんで、今日は金曜の夜。

名目は私の歓迎会で、営業課の社員全員が集まっている。

ふすまで仕切られた畳の部屋の中で、男子9人と女子は私一人だけ。

立派なスーツ男子に囲まれて、なんだか居心地が悪くてもじもじしてしまう。

お酒もあまり飲めないし、こういうときは一体何を話したらいいのだろうか。


とりあえずと一律で頼まれたビールをチビチビ舐めていると、隣に座っている清水さんが「食べてないっすねー、何か注文しますか」とメニューを渡してくれた。

とてもお腹が空いてるのでご飯ものを頼みたいけれど、テーブルの上には既にお皿がいっぱいで新たに置けそうにない。

とりあえずいいですと遠慮すると、清水さんはフライドポテトが盛られたお皿を私の前に寄せて「どうぞ」と言うので一本つまむ。

塩がきいててサクサクホクホクでとても美味しい。

ポテトを食べるのは久しぶりだ。


「美味しい!」

「そりゃ良かった!もっと食べて」


清水さんはカラアゲと焼き鳥と野菜の味噌炒めをお皿に取り分けて、私の前に置いてくれた。

取り難いでしょ?なんて言って、ニコッと笑う。

結構マメな人で、こういう場に慣れていそうだ。

会社の飲み会だけでなく、例えば合コンとかでも。

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