婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)
病院を出て、私達はマンションへと向かった。
と、ずっと思い込んでいたのだけど…
なぜだか、車は高速の入口へと入って行った。
「ねえ 圭司 どこ向かってるの? マンションに帰るんじゃないの?」
運転席を見ると、圭司が微かに笑みを浮かべた。
「ん? 長野の別荘…」
「え! もしかして、圭司、明日も休み取ってくれたの?」
私は思わず嬉しくなって、顔がほころんだ。
「いや 俺は明日から出張だし、なつだけおいて帰るよ」
「ちょっと、待って 私、ひとりで別荘に泊まるの?」
「違う違う なつのお父さんとお母さん、長野に今、帰ってきてるから… しばらくの間、療養を兼ねて親子水入らずで過ごすといいよ… お父さん達もなつに会えるの楽しみにしてたから…」
「そんな… しばらくってどのくらい?」
「え… あー 二週間くらいかな?」
「嫌だよ そんなに長く圭司と離れたくない お父様達には悪いけど、2、3日したら圭司のとこ帰るから…」
膨れる私に、圭司は困った顔でため息をついた。
「なつ… 俺は一週間大阪だし、その後もしばらく忙しくて家に早く帰れない… だから、俺が頼んだんだよ それに、なつは結婚してから、一度も里帰りとかしてないだろ? 色々あったから、お父さん達も遠慮してるみたいだけど、いい機会だから、ちゃんと親孝行しておいでよ。」
確かに圭司の言うとおりだった。
私の両親は、私を圭司に託した後、まるで縁を切ったかのように私との接触を控えていた。
あの事件のあと、しつこく週刊誌の記者が、父の私生活を追い回したことがきっかけだったけど…
もう 何年も経っているのに、未だにその状態は変わらないままだった。
それでも、最近になって、ようやく連絡だけはくれるようになった。
ハワイとの時差の関係でほんのちょっとの時間しか取れないけど、父も母も私のことを本当に気にかけている様子だった。
だから、今回、圭司が作ってくれたこの機会を、私はありがたく受け取るべきなのだけど…
「分かったよ… でも なるべく早く迎えに来てね」
それでも、やっぱり圭司に会えないのは寂しい…。
たった二週間…夫と離れるのが辛いなんて、私はどれだけ重症なんだろう…
私は窓の景色を眺めながら、圭司に気づかれないように小さくため息を漏らした。