婚約者はホスト!?④~守りたいもの~(番外編あり)

夕食を終えて、圭司はマンションへと帰って行った。
いつまでも車を見送る私に、母がそっと上着をかけた。

「冷えるわよ 退院したばかりなんだから…」

「うん…」

リビングに戻ると、酔っぱらった父がソファーで気持ちよさそうに眠っていた。

「今日は、お父様、よっぽど嬉しかったのね 普段こんなに飲まないのに… きっと、なつの顔見て安心したのよ」

そう言って、母がクスッと笑った。

「何かかけるもの持ってこようか?」

「そうね お願い」

私は押し入れから、ちょうどいい掛け布団を見つけリビングに戻った。
カーといびきをかきながら、真っ赤な顔で眠る父…

「ありがとう なつ」

私から毛布を受け取って、父の体にかける母…

しばらく会わないうちに、二人とも白髪が増えて小さくなったように感じた。

そっか…
いつまでも親が元気でいてくれるとは限らないんだよね…
もっと、大事にしなきゃいけないんだ…


「なつ 紅茶でも飲まない?」

母がそう言って、キッチンへと向かった。

「手伝うよ」

私は食器棚から、ウエッチウッドのティーカップを取り出して、母の隣に並んだ。

「ねえ お母様…」

「なあに?」

「ごめんね 孫の顔…見せてあげれなくて…」

「え? ああ そんなこと気にしなくていいのよ… 私もお父様もなつが幸せでいてくれたら、それで十分なんだから…」

母は優しく微笑みながら、ティーカップに紅茶を注いだ。

「ありがとう 圭司もね、私がいるだけで十分って言ってくれたの… だから、私は今、間違いなく幸せ…」

「そうね 圭司さんは、本当になつのこと愛してくれてるものね。なつは、幸せよね…」

「うん」

テーブルに移って、母と紅茶を飲んだ。
こうやって、ゆっくり母と話すのも何年ぶりだろう。
こういう時間を与えてくれた圭司に改めて感謝した。

夜もふけて、父を布団へと運んだ。
と言っても、フラフラな足取りの父をベッドまで誘導しただけなのだけれど…。
それにしても、私が父のこんな姿を見るのは、初めてかもしれない…。
なんだか、今日一日で父の印象が随分変わった気がする。

「なつ そろそろ なつも寝なさいね 客室のベッド使っていいから…」

「うん ありがとう…」

「それから…」

「ん?」

「大丈夫よ…」

「何が?」

首を傾げる私に、母が言った。

「子供は天からの授かり物だから… それじゃ おやすみなさい…」

「え?」

キョトンとする私に、母はニコリと微笑み、リビングを出て行った。







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