好きだと言って。[短篇]
貴方の声が好きでした。
貴方のキスが好きでした。
頭に浮かぶ言葉が、全て過去形になっていることになんだか悲しくなった。
「て…ぺぇ」
浮かぶのは貴方の顔で
考えるのは貴方のこと。
でも、
それも今日が最後かな…。
胸ポケットが妙に軽くて、もう鍵が入っていないことに気が付く。それが何かを案じさせるかのように私は携帯を開き、哲平の文字を探す。
一方的にしかかかってこなかった電話番号。
メールをしても返信は来なかったアドレス。
”消去しますか?”
…"Yes"
プツン。
いとも簡単に消えてしまうデータ。
これで、もう終わり。
暗くなり始めた公園で
最後の涙を流した。これで終わり。
もう、引きずらない。
「よっし。」
恋なんてまたすればいい。…そうだよね?きっと、きっと哲平よりいい男の子なんて一杯いるもん。
無理やり頭を回転させ、
私は前を向いた。