好きだと言って。[短篇]
「…風呂。」
「…う、うん。」
真っ赤になった顔。
整わない呼吸。
そんな私とは裏腹に心底落ち着いた様子の哲平はすっと私から離れるとリビングへと戻っていってしまった。
「…。」
どきどき、
高鳴る心臓に
比例するかのように悲しさが増す。
哲平…
辛いよ…。
苦しいよ。
ぐっと涙を堪えて、
私は明るい世界へと足を踏み出す。
哲平はキス以上のことは求めてこない。
どれだけ熱いキスをしても、どれだけ深いキスをしても、それ以上のことは絶対に手を出さない。
"私以外に誰かいるのかな?"
そう思って涙を流すのは毎日。
でも良く考えると私は彼女でも何でもないんだから、泣く権利なんてないのかな、なんて思ってしまう。
学校に行ってる時だって、
何をしている時だって、哲平のことを考えてしまう。
私以外の女の人といる
哲平の姿を。
「朱実、…別れなよ。辛い思いするのは朱実なんだよ?」
「ん…。」
潮時だと思った。
前からだったけど、最近は格段と会話の数が減った。1週間に3回以上は会っていたのに、連絡が来るのは週に1回に減った。
私を、見てくれなくなった。
「朱実?」
「ん…もう、やめる。」