ライ・ラック・ラブ
「右手を出して。お嬢様」
「もうっ。こんな時にお嬢様だなんて」

わざとむくれた表情を浮かべつつ、でも嬉しさを隠しきれない私は、すぐ笑顔に戻って、言われた通りに右手を差し出した。
でも…。

「…あ?入らねぇ…?」
「サイズが合ってないと思う、いたっ。これ以上は…」
「ごめんごめん!」

正さんは、慌てて指輪を私の指から引っこめた。
そして私たちは顔を見合わせて…クスクス笑い始めた。

「最初は社長に聞いてみたんだ。でも知らないって言われてさ」
「そうでしょうね。私、普段は指輪をしないから…あっ。それで秋恵に聞いたのね?」
「当たりー。でも秋恵ちゃんも“たぶん”って前置きしてたからなぁ。まあでも、サイズの調整は店でしてもらえるから。こんなミスがないよう、結婚指輪は一緒に買いに行こう」
「…はい」

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