好きやった。
「……いっ、井ノ原?」
衝動に任せて走り出すと、そのまま追いついた月島の背中にしがみついた。
ダウンジャケットの背面を指先で掴んで、その大きな背中に額を預ける。
月島は突然背後から引っ張られたことに驚いた声を上げたけど、ウチを引き剥がそうとはしなかった。
もしかすると、ウチが震えていることに気づいたのかもしれない。
なあ、もう……我慢できそうにないからさ。
一番アンタに言ったらあかんことやけど……言ってもええかなあ?
「……、やった」
「え?」
「――好きやった。ずっと、ずっと前から……」
月島に彼女ができたときから散々押し殺してきた気持ちが、自分でも驚くほどするりと飛び出した。
ずっと外に出る日を待ちわびていた言葉は、自分で聞くと切ない響きのように思えた。
そして……終わりへのカウントダウンが始まる。
言われた月島本人は、一瞬びくりと身体を震わせたけど黙ったまま。
何も言われないことをいいことに、溢れてくる気持ちをそのまま全部言葉にして伝えた。
「月島があの子と付き合う前から好きやった。でも、ずっと言えやんかった。月島がウチのこと、ただの友達としてしか見てないのはわかっとったから」
……こんなん、ただの言い訳やよね。
恋愛対象外として見られているのをわかっていたのに、そこから脱しよう頑張らなかった自分を棚に上げてるんやもん。
「あの子と付き合いだしてから、ずっとつらかった。彼女のことを大切にしとる月島を見とるのも苦しくて。月島が楽しそうに話す彼女の話なんて……ほんとは聞きたくなんかなかった」
月島、わかっとる?
ウチが無理して笑っとるときはいつだって、アンタがあの子の話をしとるときやったんやよ。