カリスマ社長に求婚されました
え……?

『元カノ』って、なに?

なんで、彼女にそんな紹介をしているのか理解できなくて、呆然とする。

彼女は余裕の眼差しで私を見下すように見ると、鼻で笑った。

「ホントだ。和也の言うとおり、重い人なのね。別れても、こんな風に当たり前に声をかけてくるなんて」

「え? 別れたって……?」

この人の言っている意味も、和也の言葉もまるで分からない。

頭が混乱状態になっていると、和也は彼女の背中を軽く押し、ジュエリーショップに入るよう促した。

「先に入って、指輪見ときなよ」

「うん」

笑顔の彼女に、和也も優しい表情を返している。

この店は、『ell』と書いて『エル』と読む高級ジュエリーショップだ。

新鋭カリスマデザイナーが一代で築いた日本発の店で、ニューヨークやバリにも展開している今大注目のブランドだった。

たしか社長は三十代の男性で、かなりのイケメンだとテレビで言っていた気がする。

ここの指輪は私の憧れなのに、まさかさっきの彼女にプレゼントをするつもりなの……?

胸が締めつけられる思いで、和也を見上げた。

「ねえ、和也。別れたってなに? 私たち、一度もそんな話してないよね?」
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