カリスマ社長に求婚されました
スケジュール管理や、電話応対に追われながら、その日はあっという間にお昼が過ぎた。

「茉奈ちゃん、休憩にしよう。一緒にランチに行かないか?」

デスクで書類整理を終えた相良さんが、私の席へ向かって声をかける。

「あ、はい。でも大丈夫なんですか? 電話が鳴るかもしれないですよ?」

「席空きのときは、総務にまわるよう切り替えるから大丈夫」

相良さんは私の側へくると、電話のボタンを押して切り替えた。

「行こう、茉奈ちゃん」

手を差し出されて、ドキッと緊張感が増してくる。

相良さんの手は、少し色黒で締まっていて指が長い。

素直に自分の手を差し出されずにいると、相良さんが不安そうな顔で覗き込んできた。

「オレたち、付き合うことになったと思ったんだけど、勘違い?」

「えっ? いえ、勘違いなんかじゃないです。すみません、手を出すことが恥ずかしくて……」

慌てて弁解すると、相良さんがクスッと笑った。

「可愛いな、茉奈ちゃんは。じゃあ、オレから強引に手を取ればよかったんだ」

と言った相良さんは、私の手を力強く握って、引っ張り上げた。
< 58 / 287 >

この作品をシェア

pagetop