カリスマ社長に求婚されました
弾みで立ち上がった私を、相良さんは優しく引き寄せる。

「行こうか? 美味しい店を紹介するよ。茉奈ちゃんは、なにが食べたい?」

抱きしめられているわけじゃないけど、体が至近距離にあるからか、かなり近くで相良さんの声がする。

顔が見えず声を聞くだけでも、顔が火照るほどにドキドキしていた。

「私は、イタリアンが食べたいです……」

本当は一緒ならなんでもいいけれど、相良さんに優柔不断だと思われたくなくて、とっさに答えていた。

「オーケー。じゃあ、お勧めのイタリアンレストランに連れて行ってあげよう」

相良さんは一回だけ、私の背中を軽く叩くと、先を歩いた。

そして私は、小走りで彼を追い越すと、ドアを開けた。

「社長にドアを開けさせるわけにはいきません」

私はあくまでここの秘書なのだから、それらしく振舞わないといけない。

ずっと相良さんの優しさに、甘えるわけにはいかないからだ。

「ありがとう」

相良さんは笑みを浮かべて、部屋を出ていった。
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