カリスマ社長に求婚されました
和也は、私がellを好きだということも、そこの指輪を欲しがっていることも知っていた。

その場所へ、他の女性と入るなんてひどい。

それも私の目の前でなんて、ただただ絶望感でいっぱいだった。

「最悪な誕生日……」

この日のために買ったオフホワイトのニットワンピも、こげ茶色のロングブーツも、ベージュのファーコートも、全部が空回りだった。

虚しさばかりが込み上げてきて、和也を追いかける気力もない。

フラフラと、もと来た道を歩きながら、ショーウインドウに写る自分を見る。

アップにした髪は、走ったせいで少し崩れているし、目は涙で真っ赤だ。

気を緩めると涙が溢れてきて、慌てて拭った。

どこへ行こうかな、帰ろうかな……。

帰ったところで、一人暮らしだから、和也のことを悶々と考えてしまいそうでイヤだ。

気持ちの整理もつかず、ポーッとしながら歩いていると、

「危ない‼︎」

誰かの叫び声とともに、耳に響くほどの車のブレーキ音が聞こえ、咄嗟に体が怯む。

気がついたら、赤信号の横断歩道を渡ろうとしていて間一髪、車が目の前で止まった。
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