ビタージャムメモリ
つい、逃げるように顔をうつむけた。

さっきの大泣きの痕跡を、見られただろう。


うわ、みっともない。

というか、あてつけがましい。


今さらごまかせるわけないけど、顔を上げられない。



「…歩きながら、いろいろ考えたんだよね」



熱くなった頬を手で隠したところに、そんな声が降ってきた。

先生の指は、なぜか離れていかず、下を向いた私の前髪で遊ぶように、おでこのあたりをさまよっている。

えっ、何これ、何これ…。



「嘘を言ったつもりはないんだけど、なんというか、適当な答えをしてしまったなと、ちょっと悔いて」

「適当…」

「いい加減って意味じゃなくてね、反射的に、いつもの受け答えをしちゃったなっていう」



いつものって。

柏さんたちもそんなことを言ってたけど、先生ってもしかして、ほんとに人気あるんだ…。



「そんなに、よくあるんですか、答えなきゃいけない時って」

「いや、どうだろう、でもこの時期は多いよね、やっぱり」



そうか、クリスマス前。

決してそんなタイミングを狙ったわけじゃない私は、その”多いよね”の中に紛れてしまったかと思うと、悲しくなった。

そんなイベント気分で言ったわけじゃないのに。



「でも今回は、もっとちゃんと答えたいなと思ったんだよ」

「それで、戻って来てくださったんですか」

「姉がいたのには驚いたけどね」

「でも…」



要するに、答えそのものは変わらないってことですよね。

誰であっても、オーケーとは言わないんですよね。

だったらもう、言葉だけ変えてもらったところで、私的には、なんというか…。

黙り込んだ私の額を、ノックするみたいに先生の指が、コンと叩いた。

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