ビタージャムメモリ
「それが嫌だ」
「い、嫌ですか」
「プレッシャーだよ、俺は別に聖人君子じゃないし、頭に来ることもあれば面白くないこともある」
片足をソファに上げて、崩れた髪に指を通す。
先生が指摘しているポイントは、私と先生の関係において、わりと根源的な部分だ。
だって、先生は先生で、大人で、私からしたら、理想の人。
…なんです。
「す、すみません、そういうの、出さないようにします、今後」
「出す出さないの問題じゃない」
突っぱねられて、泣きそうになった。
そんな私を、じろりとにらむ。
「弓生がどう思ってるのか知らないけど、俺はそんなに完璧じゃないよ、それを許してもらえないのはつらい」
「はい…」
「年上ではあっても、会社ではともかく、こうしてる時は目上でもない、ましてや教師でもない、わかる?」
わかります…。
「気ままにするたび驚かれてたら、したいこともできないよ、俺だって人並みに、幻滅されたら嫌だって気持ちもある」
「しないです、幻滅なんて」
「どうかなあ」
「しないです」
「そう」
手を引き寄せられて、びくっとしたところにもらったのは、おでこへの軽いキス。
そのまま隣に座らせると、先生は私の頬を両手で挟んだ。
「知っておいてね、俺はそんなに人間できてないよ」
「わかってます、けど」
「ただの男だよ」
私の頭をぐらぐらと揺らしながら言い聞かせる。
まだ少し、機嫌の直りきっていない顔。
「少なくとも弓生の前では、それだけでいたいんだよ、わかって」