ビタージャムメモリ
わかってます。

でも、それでも先生は、私の憧れなんです。

どんなに先生が勝手に振る舞ったところで、それは消えない。

そういうものなんです。



「先生が何しても、幻滅なんてないです」



言い募る私に、先生がなんだか、変な顔をした。

しばらく私の顔を両手で挟んだまま、ぐりぐりと動かして遊んでいたけれど、やがてぽんと肩を叩き、新聞に手を伸ばす。

え、話終わり?



「先生」

「その呼び方も、問題があるのかもなあ」

「じゃあ、いずれ直しますので、その前にあの、先生もしたいようにしていただけたらと」

「まあ、そのうちね」



なんで急にそんな温度が下がっちゃったんですか。

背もたれに片腕を預け、普通に新聞を読む体勢になっている先生の服をつかむと、ようやくこっちを見てくれる。

ほっとした時、なぜか先生が眼鏡を外した。

目が疲れたのかな、なんて思っていたら、急にものすごい力で抱き寄せられ、唇が重なる。

ぶつかったと言うほうが近いような勢いだった。



「先せ…」



新聞が投げ捨てられる音がした。

唇を合わせたまま、わけもわからないうちに今度は体重をかけられ、ソファの上に仰向けに転がる。

熱く重なるキスのせいで、頭がクッションに沈んだ。


苦しくて、胸を押し返しても、びくともしない。

さっきは優しかった両手が、今度は痛いくらい私の頭をつかんで、逃げるのを封じる。



「ほらまた、そうやって驚く」

「驚きますよ!」



ようやく解放された時、呆然と肩で息をしていた私を、先生が不服そうになじった。

驚くに決まってるでしょう、こんなの!



「あの、したいことって」

「わかりやすい例をと思って」



私を見下ろして微笑むと、乱暴にしたおわびみたいに、優しく耳にキスをくれる。

それはそのまま首筋のほうへ下りていき、私がびくっと反応すると、すぐに離れた。

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