ビタージャムメモリ
人差し指でお喋りを封じられ、状況を思い出して赤面した。

先生が片手で自分のシャツのボタンを外し始める。

さっきまでのくだけた空気も、優しい笑顔もなぜかなくなってしまったので、急に心細くなった。



「あの…いい加減な奴だって思いますか」

「何が?」



コットンのシャツを脱ぎ捨てると、下に着ていたTシャツも脱ぐ。

前にぶつかったことのある、先生の身体。

服を着ているとほっそりして見えるのに、実はそうでもなくて、骨とか筋肉が綺麗で、見下ろされると緊張する。



「その、先生にあんなこと言っておいて、結局他の相手を見つけてたりとか」

「思わないよ」

「今頃、気持ちは変わってないなんて、ぬけぬけと…」

「思ってほしいの?」



先生は優しく頭を抱いて、ふわりとかすめるキスをくれた。

間近で視線が絡んで、心臓が高鳴る。



「ほんとにいい加減ならね」



言い含めるようなささやきだった。



「男の腕の中で、こんなに震えたりしないもんだよ」



涙が出てきたのは、なんでだろう。

緊張?

恥ずかしさ?

とっさに顔をそむけた私を、深くは追及せず。

先生は身体中を優しくなでて、溶かしてくれた。


たぶん、私があまり慣れていないのもあって。

あとは元からのくせもきっとあって。

先生はわりと、一方的に私を責めた。


身体が熱くて、かすれ声しか出なくなって、朦朧とした視界の中、ようやく先生の熱を感じられた時、私はまた盛大に泣いた。

先生はすごく驚いたみたいで、慌てて私の髪をなでて、弓生、と何度も呼んでくれる。



「弓生…」



幸せすぎると、声なんて出ない。



「泣かないで」



抱き寄せられると、先生の肌に涙が移る。

包み込まれる安心感に、さらに溢れて顔を濡らす。


揺れる世界の中で、先生がずっと心配そうに、私を見ている。

困ったように微笑んで、これでもかってキスをして、頭をなでては、泣かないで、ってなだめてくれる。


ふわふわたゆたう意識に残った、そんなのが、一番鮮明な記憶。



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