ビタージャムメモリ
むき出しの肩に、ぬくもりが触れる。
柔らかい熱は、鎖骨をたどって頬に行きつく。
髪を優しくどけて、何度も落とされるキス。
名前を呼んでくれる声。
先生…。
「そろそろ起きたらどうよ、おふたりさん」
はっと覚醒した。
目に入るのは、ダークウッドで統一された、先生の部屋だ。
ベッドの上のすぐ横に、歩くんが座って、にやにやとこちらを見下ろしていた。
え?
視線をたどると、布団から出た私の脚。
抱きしめるように身体の前に回された腕…先生の。
どちらも裸。
「きゃ…きゃーっ!」
「いてっ」
身体を引いたはずみに、ガンと頭をぶつけた。
「あっ、ごめんなさい!」
「いや…」
先生も目を覚ましたらしく、ぶつかった顎を押さえながら、枕元を探っている。
寝起きのぼやけた声が、あれ? と呟いた。
「眼鏡なら、リビングにあったぜ」
声のするほうを見て、目を見開いた先生に、歩くんはさも楽しそうに、持っていた眼鏡を振ってみせる。
「あっちで始めちゃったんだ?」
「歩…」
「言われたとおり二時間待って帰ってきたのに、誰も出てこねーし、テーブルに食い物放置だし、ここのドアは怪しげに閉まってるし、教育に悪い家だよなあ」
状況を理解した先生が、言葉を失ってうなだれた。
顔を覆った手の向こうから、鍵つけよう、という呟きが聞こえる。
「来年から一人暮らししてやるって言ってんだからさ、それまでこういうの、待てなかったの? 意外と我慢利かねーのな、巧兄」
「わかったから、お前、一度出ていけ」
「あ、服着る? どーぞどーぞ」