ビタージャムメモリ
か…帰れって言われても…。

なかなかそんなこと、しづらいでしょ…。

私の葛藤を読み取ったのか、歩くんが勝ち誇った笑みを浮かべた。



「決まりだな、買い物でもなんでもつきあってやるよ、デート相手としては俺、悪くないはずだぜ」

「そ、そんな…」

「手始めに、お前の金でパフェ食お」

「え!」



歩くんは再び席に戻ると、どすんと腰を下ろしてメニューを眺めはじめた。

すっかりいつもの憎たらしい余裕を取り戻している。

何それ…。



「俺、このチョコのやつ、お前は?」

「さっきケーキ食べたばっかりじゃない」

「入るだろ、こんくらい」

「ほんとに甘いもの好きなんだね…」



唖然としつつ、メニューを受け取ってしまう。

"三種のベリー"がおいしそうだなとつい普通に検討しながら、うう…と泣きたいのをこらえた。


ここで帰っても、デートを楽しんでも、どのみち歩くんは味方をしてくれないわけで。

すなわち先生の誤解も解けないわけで…。


何やってるんだろ、私。

行き場のない思いに唇を噛む私に、歩くんは素知らぬふりで、どこ行く? なんて本当のカップルよろしく、ご機嫌に話しかけてきた。





【楽しかったろ、バーカ、ざまーみろ】



くっ…。

家に着いた頃に届いたメッセージに、携帯を握りしめた。

楽しかった、実際。

最近忙しくて遊びに出る暇がなかったため、冬の服が足りなかった私は、つい本気で買い物をしてしまい、また自認するとおり歩くんが楽しませ上手なのだ、これが。

かわいーよ、なんて乗せられて、コートとか買っちゃったよ…。

どれだけ年上のお姉さんと遊び慣れてるのか。


あなたの甥はプチジゴロですって、いずれ先生にチクってやる。

機会があればだけど。

たぶんないけど。

あっても言えないけど、そんなこと。

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