そのキスで教えてほしい
「――びっくり。鈴沢だ」

「さ、崎坂さん!?」

まさか、こんな所で崎坂さんに会うなんて。
どうして、なんで、という動揺でいっぱいになって目を見開いていた。

「す、住んでるの、この辺りでしたっけ……」

「今日越してきたんだ。そこの信号を右に曲がった先のマンションに」

「あ……そうなんですか。わ、私は左に曲がった先のマンションなんです」

「へえ、近いな」

崎坂さん、この前引っ越すって話をしていたけどまさかこの辺りだったなんて。
驚きすぎて鼓動もずっと速い。

待って、そういえば私すっぴんじゃない。うそやだ、どうしよう。
こんなことなら休日でも化粧をしておくべきだった。

先程まで『気を抜いたっていいじゃない!』と思っていた自分を激しく後悔する。

恥ずかしいくて、手汗まで滲んできた。

「も、もう、びっくりです……」

「うん。驚いたな」

などと言いながら、ちらりと確認してみた崎坂さんは穏やかに笑っていた。
さっきの「お」が彼にとって驚きの最高潮だったのかも。
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