そのキスで教えてほしい
「大丈夫ですよ」と言おうとしたけど、高鳴る鼓動に邪魔をされ、そのまま。

ただどぎまぎしている間に崎坂さんの車にたどり着いた。

黒い車を目の前に、変な緊張をする。
乗せてもらえるのはとてもありがたいことなんだけど……。

二人分の荷物を後部座席に乗せ、ドアを閉めた崎坂さんをひたすら見つめている私。

「前、乗って」

「は、はい。すみません、あの……お願いします」

お願いしてしまった。
私に向けられた視線にドキドキしながら、頭を下げて助手席のドアを開けた。

運転席に崎坂さんが乗り込むのを確認してから私も乗った。

俯いたまま、静かな車内に響く衣擦れの音を意識しながらシートベルトをつける。

ちらりと崎坂さんの横顔を見てみたけど、いつもと変わらない。
私はこんなに意識していても、相手は普通なのだ。

キス、みたいなことをしたのに。

もしかして、あれはキスではなかったのか。
ただ顔を近づけただけ?

いやでも、コートを掴まれて引き寄せられ、吐息が口許に――

思い出したら顔が熱くなってきてしまった。
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