そのキスで教えてほしい
しかしすぐに足を止める。
目に入った光景に一気に脈が速くなった。

通路の脇、男性と女性が抱き合っている。
しかもそれは――崎坂さんと木村さんだ。

崎坂さんの腕が木村さんの腰へしっかりとまわっている。

私は固まったまま二人を見つめていた。
そして、こちらに気づいた崎坂さんと目が合う。

彼は何ともない感じで私と目を合わせたままだった。

ドクン、ドクン、という鼓動の音が全身に響いていて、私はまったく動くことができない。

崎坂さんは、女性に対して軽い考えを持っている人だろうと思っていた。

その通りだった。

だけどありえない。湖島さんが木村さんに好意を持っていることを知っているのに、木村さんと……なんて。

同期で仲が良いんじゃないの?
なのにどうしてそんなことができるの?

最低だと思った。その瞬間、私の足が動いて再びトイレの中へ入り、鏡の前に戻った。

ありえない。本当にありえない。
女なら誰でもいいんだ。それが友人の好きな人でもお構いなしなんだ。
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