そのキスで教えてほしい
思っていた以上の軽い人だった。

ほら、やっぱり私への言葉はからかっていたものだったんだ。
キスだって、面白半分でしょう?
よかった。本気にしなくて。

よかった……。

そう思う私の胸は、先程からキリキリと痛んでいた。
しかも目元まで潤んできて、息が詰まるような苦しさもある。

“そういう人だった”
それが悔しくて……悲しい。

どうして崎坂さんに失望しているんだろう。
馬鹿みたい。

思えば思うほど胸の痛みは増していく。

気づきたくない想いがその中心にある。

彼に対して抱く感情が滲んで痛い。

私はそっと瞳を伏せる。
苦しさを少しでも和らげるために、深く息を吐き出した。


しばらくしてもう一度通路に出てみると、二人の姿はなかった。

「遅かったね、鈴沢さん!」

「す、すみません」

湖島さんの屈託ない笑顔からすぐに視線を外して謝った。

お店の前に三人はいて、私のことを待っていてくれた。

「素敵なお店でした。今度友達とも来ようっと」

そう言って微笑む木村さんは何事もなかったかのよう。
崎坂さんも平然としている。
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