そのキスで教えてほしい
すると、ホームに着いたところで崎坂さんが私の顔を覗くように見てきた。

「どうして俺と目を合わせないんだ?」

「べ、別に。見る必要ないからですよ」

「鈴沢」

ぐいっと腕が捕まれて、私は崎坂さんを見上げる。

「な、なんですか」

激しく鳴り出す鼓動。
こんな場所で、人だっているのに。

「あの、離してくださ……」

「見てただろ。俺と木村のこと」

ドキリとして、崎坂さんを見つめた。
そして二人が抱きあっていた場面が頭に浮かんで、唇を強く結ぶ。

崎坂さんは平然とした表情で私を見据えている。
それが悔しい。
私はこんなに色んな感情が溢れそうなのに。

会社の前で崎坂さんが女性の頬にキスをしていた場面を私が見た時だって、彼は平気な顔をしていた。

しかも面白がっているようだった。
今日のことも、見ていた私をからかおうとしているのかもしれない。

そういう人なんだ。

「……最低ですね」

私は小さな声を出した。

「湖島さんが木村さんのこと気になってるって知ってるクセに。女性に対して軽すぎるし、最低ですよ」
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