そのキスで教えてほしい
『スマホ忘れたんだ』
「はい、デスクの上にあるファイルに挟まって震えていたので気づきました」
『そうか、やっぱり会社か』
ほっとしたような声を出した崎坂さん。
私は彼のスマートフォンを耳に当てながら、言葉を躊躇ってしまう。
この前のことで崎坂さんとは気まずいことを忘れていた。
だけど思いやりのない態度を見せるのは同僚として、人間的にどうなのかと考えてしまった。
「あの、私今から帰るので、近くまで届けましょうか?」
『……いいの?』
「はい。近くですし……」
残っている人を気にして声を小さくした私に、崎坂さんは『助かる、ありがとう』と言った。
お互いのマンションの近くにある信号まで崎坂さんが出てくることになり、了解して電話を切る。
本当は気まずいから嫌だけど、薄情だと思われたくないっていう気持ちの方が勝った。
私は帰る支度をし、崎坂さんのスマートフォンを持って会社を出た。
そういえば、女性の頬にキスをしているのを目撃したあの日も崎坂さんは忘れ物をしていた。
バスの中でそんなことを思い出したら、崎坂さんと木村さんが抱き合っていた場面まで浮かんでしまい、胸がズキズキと痛みだす。
余計なことを考えるのはやめよう。私はただ、同僚としての親切心で彼にスマートフォンを渡すだけ。
そう言い聞かせているうちに、自宅近くのバス停に着いた。
バスを降りて、待ち合わせの信号まで歩く。
近くまで来ると崎坂さんが歩道柵の脇に立っているのが見えた。
「はい、デスクの上にあるファイルに挟まって震えていたので気づきました」
『そうか、やっぱり会社か』
ほっとしたような声を出した崎坂さん。
私は彼のスマートフォンを耳に当てながら、言葉を躊躇ってしまう。
この前のことで崎坂さんとは気まずいことを忘れていた。
だけど思いやりのない態度を見せるのは同僚として、人間的にどうなのかと考えてしまった。
「あの、私今から帰るので、近くまで届けましょうか?」
『……いいの?』
「はい。近くですし……」
残っている人を気にして声を小さくした私に、崎坂さんは『助かる、ありがとう』と言った。
お互いのマンションの近くにある信号まで崎坂さんが出てくることになり、了解して電話を切る。
本当は気まずいから嫌だけど、薄情だと思われたくないっていう気持ちの方が勝った。
私は帰る支度をし、崎坂さんのスマートフォンを持って会社を出た。
そういえば、女性の頬にキスをしているのを目撃したあの日も崎坂さんは忘れ物をしていた。
バスの中でそんなことを思い出したら、崎坂さんと木村さんが抱き合っていた場面まで浮かんでしまい、胸がズキズキと痛みだす。
余計なことを考えるのはやめよう。私はただ、同僚としての親切心で彼にスマートフォンを渡すだけ。
そう言い聞かせているうちに、自宅近くのバス停に着いた。
バスを降りて、待ち合わせの信号まで歩く。
近くまで来ると崎坂さんが歩道柵の脇に立っているのが見えた。