そのキスで教えてほしい
しかしそこで固まる。
向かいに座る崎坂さんは、少し驚いたような顔で私を見ていた。

やだ、ついはしゃいでしまった。
職場ではこんな感じではないから、びっくりしたのかもしれない。

「す、すみません」

恥ずかしくなり、視線をそらして誤魔化すようにスプーンを口へ運ぶ。

崎坂さんの止まっていた手が動き、オムライスを崩す。

「何で謝るんだ? 美味しいよ、オムライス」

「いや、なんか騒いじゃって……」

「俺はそういう鈴沢見れて嬉しい」

ドキン、と胸の鼓動が強く鳴った。

じわじわと体が熱くなって、スプーンを持つ手が震えそうになった。

もう、なんで。
どうしてそんなことをさらっと言うの?

恥ずかしくなって、私は視線をオムライスに向けてひたすらスプーンを動かした。

崎坂さんの言葉が頭の中で何度も響く。
惑わされてはいけない。ただの気を遣った言葉。

そう思おうとしていても、なかなか頬の熱は冷めなかった。


食事を終えてちょうどよい時間になったので、私たちは移動してシアター内へ入った。

座席は真ん中あたり。
公開が開始されて数週たっているけれど、ロングヒットしている洋画で他にも結構人がいた。
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