旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~

まあでも、思いもよらぬ楽しいひとときが過ごせたことを感謝して、私はニッコリと微笑むと彼に向かって小さく手を振った。

「それじゃあ、どうも。おやすみなさい」

我ながらいいスマイルが向けられたと思う。品の良い笑い方など幼少の頃から習得しているのだ。浅葱令嬢とびっきりのラグジュアリースマイルで、楽しかった感謝を籠めてイケメンさんを見送る。……けれど。

「ん?」

彼はこちらにジッと視線を合わせたまま微動だにしない。

なんだ? 必殺マイルの効果が抜群すぎて惚れられてしまったかしら? あらやだどうしましょう、私、婚約者がいるのに。

なーんて馬鹿な事を考えていたら、イケメンはふっと表情を綻ばせて

「あなたのような素敵な女性に会えて良かったです。気をつけて帰ってくださいね、そんな魅力的な格好をしていたらオオカミに襲われてしまいますよ」

歯の浮くような甘いあっまーい台詞をぺろりと吐き出した。

な、な、何者!?
 
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