旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
あまりの甘言に私がポカーンとしている間に、彼は「じゃあ、おやすみなさい」と片手を上げ、爽やかに去っていってしまった。
しばしその背中を見送り佇みながら、私は自分の心臓が加速を始めたことに気付く。
――い、今のはないわ。今のはないわー。初対面の私に向かって『素敵な女性』とか、どんだけチャラいんだっての。しかも『オオカミに襲われてしまいますよ』だって。ないわー。なんでそんな芝居掛かった喋り方してんの。ないわー。
頭の中ではツッコミの嵐が吹き荒れる。普段の私ならさっきの彼の言葉など失笑以外の何者でもないし、友人のゆーちゃんにソッコー電話して笑いを共有するところだ。
けれど、ツッコむ気概とは裏腹に、私の心臓はアホかってほど高鳴ってるし顔まで熱くなってしまってきた。
そして、彼の台詞と笑顔が脳内で繰り返し再生されるたびに、胸がこう、グワーって締め付けられて全身がグワーって盛り上がって、顔が勝手にニヤけちゃってなんつーかつまりその。
メッチャクチャときめいてしまった。