旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
 
あー、早く部屋に戻ってラムネグミ食べながらゴロゴロしたいなあ。

ジャンプの早売りってもう出てるかな。セレクタリーに言って買ってこさせようかな。っていうかコンビニ行きたいなー。

ピンクの花柄で彩られたメタリックブロケードのイブニングドレスも、きっちりと締めつけた胴回りがちょっとしんどくなってきた。パールホワイトのピンヒールも然りだ。

少しだけ休んでこようと、私はトイレに行くふりをして人の輪から抜け出し船内のレストルームへと向かった。

と、廊下の窓からふとデッキを見て、ある光景に気付く。

「……充さん?」

デッキの後方部分はヘリで来るお客様のためのヘリポートになっている。そこに操縦士や秘書達と共に立っているテイルコートの後ろ姿を見て、私はすぐにそこへ向かった。

「充さん、お帰りになるんですか?」

階下から現れるなり声をかけた私を振り向いた顔は、やっぱり充さんだった。ポケットに手を突っ込んだラフな立ち姿のまま、驚いた顔でこちらを見ている。

けれど彼はすぐに佇まいを直すと、ニコリと余裕の窺える紳士然とした笑顔を浮かべた。

「うん。待ってる人がいるんでね。明日も早いし、おいとまさせてもらうよ」

充さんは自分で起ち上げた新プロジェクトに着手していてとても多忙だということは聞いている。一時間も経たずにとんぼ返りするのも仕方ない。でも。

「颯に……言わなくていいんですか?」
 
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