旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
 
『ねえ、何やってんの?』

鯉が泳ぐ池のほとりに、そのまん丸な背中はあった。

スーツが弾けそうなほどパツパツな背中を丸めて、その子は池の鯉を眺めていた。

大人ばかりの空間で退屈していた私はさっさと園庭へ抜け出し、あちこちを探検したあと彼を見つけて声をかけたんだ。

その子は驚いたように肩を跳ねさせてから、ゆっくりとこちらを振り向いた。後ろ姿から想像はしていたけれど、見事なプクプク顔だった。

『……鯉、見てた』

非常にふくよかだったけれど、声や顔立ちや身長からして、その子は私より少しだけ年上だったと思う。たぶん、九、十歳くらい。

『ふーん?』

彼が随分夢中で見ていたようだったので、さぞかし面白いのだろうと思い、私も隣に並んでしゃがみ込んだ。

しかし池にいるのはなんの変哲もない鯉だ。数は多いけどうちの庭にいるのと大差ない。

何が楽しくて見てたのだろうと、私は率直に尋ねる。

『面白い?』

『……別に。ゲームも本も今日は持っていっちゃダメって言われたから、退屈で見てただけ』

『だったらさ、あたしと遊ぼうよ。駆けっこしよう。走っていいのは飛石の上だけ、落ちたら負けね!』
 
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