旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
同じ退屈仲間をみつけたことで嬉しくなった私は、即座にその子を遊びに誘った。腕白な少女だった私らしい話だ。
けれどその子は立ち上がりはしたものの、嫌そうに首を横に振る。
『やだよ、駆けっこなんて。俺、スーツだし革靴だし、走れないよ』
確かにその子はスーツだった。子供らしからぬ高級そうなスーツにネクタイまで結んで、ピカピカの革靴を履いている。
けれど、そんなことであきらめる少女の私ではなかった。
『あたしだってワンピースだよ。これ、すっごく高価いんだって。靴も。汚したら藤波に怒られちゃう。でも私は走れるよ、駆けっこ得意だから』
今思えばなんという無鉄砲な無敵感だろうか。駆けっこが得意だろうが何だろうが、高級なワンピースとエナメルの靴で走ってはいけないということを、この頃の私はまるっきり理解していない。
しかもそれで論破したつもりになった私は、嫌がる男の子の手を引いて飛石の並び始めの道まで強引につれていった。
『俺、やるって言ってないからな』
『弱虫~、一番になる自信がないんだ』
そっぽを向こうとする男の子を煽ると、さすがにムッとした顔をされたのをよく覚えている。
『そんなことない! 俺はマンハッタンのキンダーガーデンでも、いっつも一番の成績で――』
『じゃあ競争ね! いくよ、よーいドン!』