旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
――そうだ、思い出した。
この日私は、自分が将来嫁ぐ結城家がどれほどすごいかを藤波とおじいにトクトクと聞かされていた。『お前の旦那さんになる人は日本で一番立派で賢くてすごい男なんだよ』と。
そして私は幼心に、一番というのはそんなに素晴らしいものなのかと妙な感心を抱いていたのだ。
そんな単純な理由から、私は自分と、さらには自分の結婚相手がいかにすごいかをドヤ顔で誇った。
すると男の子は不機嫌だった顔を少しだけ泣きそうに歪めてから、突然自分の革靴を乱暴に脱ぎ捨てた。
『すごくない、そんなの。俺だってやればなんでも一番になれる。見てろよ』
そう言うと彼は松の幹に手を掛け、重たそうな身体でヨイショヨイショと登り始めた。
丸っこい身体で登る様はまるで子熊みたいで可愛かったが、非常に危なっかしかったのをよく覚えている。
けれど彼は顔中に汗を掻きながらも、どんどん松の木を登っていった。
そして自分の背丈の三倍以上はある枝分かれした幹まで登ると振り返って、下にいる私を見た。
『どうだ、すごいだろ! 俺だって一番だ!』
息を荒げ汗まみれの顔でドヤる彼を見て私は――素直に、感動した。
『……すごい! すごいじゃん、カッコいい!』
目を輝かせパチパチと手を叩き称賛を贈ると、男の子は一瞬キョトンとした後みるみる顔を真っ赤にした。
すぐに逸らされてしまったけれど、その顔が一瞬泣きそうに綻んだような気がする。
しかし。