旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
「……颯……」
会いたくてたまらなくなった名前をポツリと零せば、充さんはとびきり優しい笑顔を浮かべて私の頭をポンポンと撫でた。
「してやってよ、あいつをマナちゃんの一番に。あいつ、努力して努力して俺を追い抜いて一番になれば、きっと結城のトップを奪えてマナちゃんを手に入れられるって信じて頑張ってきたんだ。たぶん、日本で一番の頑張り屋だよ」
「……はい……」
充さんの言葉に、涙が出そうになった。
嘘みたいだ。颯が私のためにそんなに頑張り続けてきただなんて。あのとき言ったたわいもない『一番』を、ずっとずっと求め続けていただなんて。
嬉しくて、けれど一途な想いに気付いてあげられなかった自分が不甲斐なくて、気持ちが混乱する。自分をこんなに馬鹿だと思ったことはない。
プライドの高い颯のことだ、今とはかけ離れた容姿だった頃のことを私に思い出して欲しくなくて言い出せなかったに違いない。
それに加え意地の張り合いが、私達の気持ちをこんがらせてしまったまま今日まで来てしまったんだ。
だから私は勝手に一方的な片想いだと思い込んで、颯の本当の気持ちなんて全然考えもしてなかった。『最低の夫』だとか『充さんと結婚したかった』だとか、颯にぶつけてしまった酷い言葉を、後悔してもしきれない。
政略結婚という建前に隠された彼の深い想いに、私ちっとも、これっぽっちも気づいてあげられなかった。
――ごめんね。颯。
涙がこらえきれなくて俯いてしまうと、充さんは励ますように頭を撫でながら明るい声で話した。
「まあ、おかげで俺はライバル視されてますます颯に嫌われちゃったけどな。まともに口もきいてくれねえ。俺はもう次期総会長の座を放棄したってのに、未だにあの態度だよ。執念深さも日本一だね、あいつは」
確かに、颯の執念深さは尋常じゃない。だからこそ彼は結城の後継者として非の打ち所のない男になったのだ。
けれど、颯がストーカー気質なのもそこに由来しているなと思ったらなんだか可笑しくて、私は肩を竦めて小さく笑った。
と、そのとき。