旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
「――真奈美から手を離せ」
革靴が床板を踏みしめる音と共に、低く怒りを含んだ声が聞こえた。
驚いて振り向くとそこには、怒ってる……なんて言葉では言い表せないほど憤慨オーラを放ってこちらを激しく睨みつけてる颯の姿が。
「噂をすればなんとやら。嫉妬深い旦那様のご登場だ」
ビビっている私とは対照的に充さんは余裕の笑みを浮かべて手を離したけれど、どうやらその飄々とした態度がますます颯の癇に障ったらしい。
カツカツと足早にやって来た颯は私の腕を掴むと強引に引き寄せ、充さんに向かって殴りかからん勢いで怒鳴った。
「ふざけるな! 継承権を放棄したお前はもう結城には用なしだ。真奈美に近づく権利もない。覚えておけ、俺が全権を担ったらお前を追放して――」
「颯、やめてっ!」
本気の怒りを見せる颯と充さんの前に、私は慌てて立ちはだかる。
颯は充さんをライバル視するあまり色々と誤解している。充さんは間違いなく、颯の幸福を願ってくれているというのに。
なんとか誤解を解いて取り成そうとしたけれど、それが却って颯の怒りに火を着けた。
私の腕を強く掴んだ颯は、さらに表情を険しくして強く睨みつけてくる。そして、まるで自嘲するように口角を歪めて笑って見せた。
「……やっぱりこいつか、お前の“結婚したかった好きな男”は。……残念だったな、結婚相手が正統後継者の兄貴じゃなくって。悪かったな、政略結婚の相手が俺なんかで!」
颯が汚らわしいものでも吐き出すような口調でそう叫んだ次の瞬間――、私の右フックが颯の左頬にクリーンヒットした。