旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
 
殴られた颯はもちろん、充さんも、騒ぎを聞きつけて近くまでやってきたセレクタリーもバトラー達も唖然としている。

うるさい海風の音も、遠くに聞こえるパーティーの喧騒も、潮騒さえも、一瞬やんで場が静まり返ったような気がした。

いや、さすがに私もグーパンはどうかとも思ったけど。颯があんまりにも情けないことを言うもんだから、うっかり鉄拳制裁してしまったのだ。仕方ない。

それでも気の治まらない私は、唖然としている颯の胸倉を掴んでさらに説教をかます。

「カッコ悪い!! あんた、世界一カッコ悪いんですけど!」

その場にいた全員が、再び驚きに目を丸くする。結城の御曹司にグーパンかましたうえ説教するとか、いくら婚約者とはいえ怖いもの知らずにもほどがあると、浴びせられる視線が語っている。

充さんに関しては、たった今『弟をよろしく』的な助言をしたばかりなのに、真逆の方向へ突っ走っていった私の行動に、ただただ衝撃を受けているといったところだ。

様々な視線を浴びながら、それでも私は颯に説教を続ける。

「あんた、私が好きなんでしょう!? 私のことずっと好きで、努力して努力して努力しまくって、ついでにストーカーまでして手に入れたんでしょう!? だったらちゃんと伝えてよ! やきもちばっか焼いて、勝手に怒って、ケンカばっかして、馬鹿みたい! そんなに頑張ってきたのに、なんで自信持って『好きだ』って言えないのよ! 世界一頑張ってきたくせに、いじけ虫で嫉妬深くて暴君で弱虫な颯なんて……世界一カッコ悪い!」

言い切って息を切らせ肩を弾ませる私を、颯は殴られた左頬を手で押さえながら呆然と見ていた。

けれどだんだんその顔が赤く染まり、怒っているとも困っているとも、照れているとも見えるような表情に変わっていく。

「……おっ、俺は……っ! 俺は――」

何かを言おうとして口を開いた颯だったけれど、その視線が私から充さんに移されて、言葉を飲み込んだ。
 
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