旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
 
辺りが一斉にどよめき、「おやめください! 颯様!」とセレクタリーやバトラー達が叫ぶ。

けれど当然、颯は止まらない。額に汗を滲ませて、あっという間に私のいる幹の分かれ目の下まで登ってきた。

「……颯……」

差し伸べた手を取ると思っていた私は、目を潤ませて彼を迎えようとする。

けれど颯はなんとそれを無視して分かれ目まで登り切り、さらにその上に続く幹に登っていくではないか。

「は?」

呆気にとられていると、さらに周囲からのざわめきが大きくなる。セレクタリー達の声が悲鳴に変わり、スタッフが梯子を持って右往左往する姿が見えた。

「ちょっ……? あ、危ないよ、颯!」

これ以上は幹があまり太くなくて危ない。けれど颯は不安定に揺れる枝に手を伸ばし、さらに上……私の頭よりもっと上にある幹の分かれ目にたどり着いて振り向いた。

樹を揺らす強い海風にも負けず、颯は枝に手を掛けながらまっすぐに立ち、足元にいる私に向かって言い放つ。

「――勝ったぞ、真奈美。俺が一番だ」

髪が乱れ、汗まみれの顔にフッと浮かべた笑みは、憎らしいほどに勝ち誇っている。

『本当にあんた負けず嫌いだな!』とツッコミそうになったけれど、私は満面の笑みを颯に向けて頷いた。
 
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