旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
(藤波……!! あんたの言う事は間違ってなかったよ……!)
本当に成人した婦人はむやみにスッピンで出掛けてはいけないと痛感した。どこでどんな出会いが待ち受けているか分からないのだから。
……まあ、素敵な出会いが待ち受けていたところで、婚約者のいる私には関係ないんだけどさ。
でも、やっぱり女としてはイケメンの前で醜い姿など曝したくはない。私は彼の視界に入り込まないよう、顔を背けつつそーっとその場から離れる事を決意した。
出来ればもう少しその輝くお姿を目に焼き付けたかったけど……ちょんまげヘアーでおでこ丸出しのスッピンを見られるのは拷問に近い。私は静かに彼の視界からフェードアウトを試みた。ところが。
「買わないんですか?」
その場から離れようとした私を、なんとイケメンが呼び止めるではないか。
まあ確かに明らかに購買意欲を持っていた私が何も手に取らず、ジリジリと逃げ出そうとしているのは不審だったかもしれないけど。でもそこは空気を呼んで欲しかった。