籠のなかの小鳥は
『ひそかに宮中を抜け、蘇芳の私邸へ。そのための手はずは整えてある』

文にはそう記されていたのだ。


声が聞きたい。顔が見たい。無事を確かめたい。
その想いを汲んでくれたのだ。

多忙な政務をこなしながら、小鳥と蘇芳を会わせるための采配まで。
白く清かな光を投げかけてくれる、月のひと。


否があろうはずもなく、すぐに承諾の文をしたためて、その場で使いの者に託した。



翌朝早く、女房たちがまだ寝静まっている暁闇のなか。
小鳥はかづらに手伝ってもらいながら、手早く身仕度をととのえた。

身につけたのは、桜の小袖に紺の切り袴。以前、お忍びの外出のためにあつらえたものだ。

妻戸を抜けて、かづらとともに濡れ縁へ出る。

わずかな宿直役をのぞいて、宮中はまだしんとした眠りに包まれている。
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