先生、俺を見て(仮)
固まる蛍。
前回の二の舞だ。
(またしても嫌われる...!!しまったあ......!!いや、落ち着け私...まだ気づかれてないかも、今のうちに)
蛍はすぐさま颯たちに背を向け、そろりそろーりとその場を去ろうとした。
...のだが
がしっっ
「うわっ!!!ええっ何!?」
突然、蛍の腕が掴まれた。
掴んだのは勿論、颯。
蛍は慌てて振り向く。
「ご、ごめんっ、別に覗いてたわけじゃ...っ!!」
しかし、頭を下げて謝る蛍に、颯は平然とした顔で言った。
「そんなところで何してんの、母さん」
「.........は?」
まさに、ポカンである。
訳が分からない。
「ほら、帰るよ母さん。今日はなに、すき焼きでも作るの?」
ボケっとしたまま彼女の腕をぐいぐいと引っ張り颯はマンションへと向かう。
状況を飲み込めない蛍はされるがまま。
「え、え...結城君一人暮らしじゃ...」
マンションの前で立ち尽くしていた女子高生は困惑している。
当然だろう、突然の母の登場だ。
だが、そんな彼女に颯は冷たく言い放った。
「してるよ一人暮らし。でも今母さんが来てるんだ。久し振りだから明日も一緒に過ごす予定。だから無理」
そして呆然とする女子をそのまま放置し、颯は蛍を引っ張ってマンションの中に突っ込む。
「え、ちょっと待って結城君...」
「うわっとっと、急に引っ張らないでよ!!あ、ご、ごめんねぇ邪魔して」
置いてけぼりの女子高生にとりあえずの謝罪を残し(私は全く悪くないんだけども!)、蛍と颯はエントランス奥のエレベーターの中に消えていった。