先生、俺を見て(仮)
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それが彼との最初の出会い。
過去を思い返しても、この時ほど嫌な出会いはなかった。
あの日以来会うことはなかったけれど、まさかここで会うなんて。
それに
さっきの様子では彼も蛍が隣人であることを覚えているようだった。
(ちょっと意外かも...)
隣を見ると当の男子生徒は最初よりも不機嫌な顔で椅子に座っている。
仕方ないな
隣人の、それも怪しい不審者みたいなやつと認識した人が自分の先生だなんて私でも嫌だ。
担当講師の変更願が出されるのはきっと確実だろうが、
しかしこの時間だけでも乗り切らなくては
そのために何か会話を
そう思って蛍は男子生徒の資料を手に取る。
「えっと...初めまして、じゃないけど、まあほぼ初めましてだから自己紹介からしようか
君は...結城 颯(そう)君?」
そう尋ねると彼は一層顔をムッとさせて半分怒ったように低い声で
「はやて」
と言った。
初めこそ何のことか分からず、きょとんとしていた蛍だがすぐにその意味を理解できた。
蛍も何度も同じ経験をしてきたからだ。
「ああ!この“颯”って漢字、『そう』じゃなくて『はやて』って読むんだ!
そうか、ふふっ、私と一緒ね」
思わず笑ってしまった蛍を、彼は横目で不審そうに見る。
「私、佐倉 蛍(けい)っていいます。『ほたる』じゃなくて『けい』なの。よく間違えられるんだけどね」
笑顔ではにかみながらそう言う蛍。
その様子を彼──颯は目を丸くして見つめていた。