先生、俺を見て(仮)
君の事を教えて

得意な事は何ですか









あれから1ヶ月が過ぎた。



颯は今も普通に、塾に通い続けている。


相変わらず必要最低限のことしか話さないが、以前ほど嫌な顔をせずに授業を受けている。


もちろん講師は蛍。


嫌われていると思っているだけに、なんだか不思議な感じはするが、それでも淡々と時間は過ぎ、もう一ヶ月だ。


 時の流れるのは早いこと。





 今日は金曜


 秋空はすっかり闇に染まってしまった夜八時、五分前





 颯の授業が始まる時間だ。


 先に授業をした生徒の資料を整理しながら颯が来るのを待つ。


 


 生徒ごとにまとめた資料をファイルにしまい、棚に戻していた蛍の頭に背後からこつんと何かを当てられた。


 びっくりして振り返ると、してやったりの笑顔を浮かべた背の高い男子が立っている。


 
「よっ佐倉、元気か」


「...何ですか九条先生」



 由依と同じ大学で文学部に通う九条洸太。


 生徒たちにも人気のある元気な男子講師だ。


 印象としては颯と真逆の男。かと言って得意と言うわけではない。


 この元気過ぎるノリはちょっと苦手。



「洸太でいいって言ってんのに。敬語も変だって、同い年だろ」


「名前で呼ぶの苦手なんです。ため口も苦手。勘弁してください」



 颯のファイルを手に取り、その場から逃げるように立ち去る。



 その後姿をため息をつきつつ洸太は見つめる。


 そこへ遅れて由依がやってきた。






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