才川夫妻の恋愛事情



それでよくよく部長に話を聴けば、俺の補佐にみつきをつけると言う。それはさすがにやりにくいだろうと思って〝同期なんですけどいいですか〟とエクスキューズをつけたが、〝何か不都合があるのか?〟と返されて。そりゃそうだ。仕事なんだから同期だとか関係ない。

同じ部になったと知ったみつきは恨めしそうに俺のことを見ていたが、隣の席だと知って、今度は状況が処理できないと言うようにぽかんとしていた。

そしてその夜。



「むりむりむりむりむり!」



家に帰るなり、エプロン姿の彼女が詰め寄ってきた。

隣の席で他人のフリなんてできるわけがない、と彼女は自信満々に断言した。



「今まで通りは、無理ですからね」

「なんで」

「ドキドキするから」

「、」



それは正直なところ意外な答えだった。てっきり、他人のフリをしながらする仕事がやりにくいんだろうなと思っていたから。ドキドキするんだ、と思うと、どうしても訊きたくなってしまう。



「……なんで?」

「……なんで、って」



あ、困ってる。


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