才川夫妻の恋愛事情
「……そうなんですか? 意外です。松原さん、望みがないところにぶつかっていくのって非効率で嫌いって言いそう」
「それはきっとまだあんたの私への分析が甘いんだわ」
「咬ませ犬はごめんだって言ってたじゃないですか」
「勿論できれば避けたいとは思ってる。でもそれで済まないことってままあるじゃない」
松原さんの後ろに見える外の景色が左から右に流れていく。外灯があったり、なかったりして、彼女の顔を照らしたり、影を落としたりする。それでも変わらない表情が綺麗だった。
「私はいつでも自分を一番大事にしているの。告白することで自分は傷つくのか、それ以上にすっきりするのか。自分にとって今の衝動が大切か、告白した後の現実のほうが大切か。告白して得られるものがあるのか、ないのか。自分にとっての最良を考えて、ちゃんと選んでるつもり」
「……自分のことだけですか?」
「ええ。私が告白することで相手がどんな気持ちになろうが関係ないわ。だって無理なときは無理だって断るでしょう? 相手にはその選択の自由がある。でも告白した段階で、自分にはもう選択肢がないの。とっても不自由なの。相手がどう思うかなんて最初から心配するのは馬鹿みたいじゃない?」
「自己中じゃないですか、それって」