才川夫妻の恋愛事情
「っえ」
少し怒気を含ませて叫ぶと、声がして。才川くんはぱっと私の首筋から顔を上げた。驚いた顔と目が合う。
……驚いた顔?
こっちが戸惑いながら、言おうとしていた言葉を続けた。
「……才川くんもう、止まってくれないと。今からなんてどう考えても間に合わないよ……」
「あぁ……うん。……ごめん……?」
「……」
どうも様子がおかしい。
才川くんはまだ何かにびっくりしているようで、ごめんと言ったものの私の上から退く気配がない。朝から人のことを襲っておいて何を驚いているんだろう……と思って見上げていると、浮かんだ可能性は一つ。
「才川くんもしかして」
「……」
「……寝ぼけてた?」
バツが悪そうにそらされた切れ長の目を見て、確信した。
彼はもう一度〝悪かった〟と小さな声で言ってベッドから降り、着替えを始める。私は一人取り残された広いベッドで布団の中に潜り、身悶えた。――――なに今の! かわいい……!
同じベッドで眠って朝を迎えたら、こんな顔も見られるんだなぁなんて満ち足りた気持ちでいると、ワイシャツに着替えている途中の才川くんがぼやく。
「…………やっぱりなぁ。同じベッドじゃ一瞬でデキてたよな……」
「……んん?」
才川くんはやっぱりよくわからないことを言う。一瞬でできるとは……?
訊いても彼は〝なんでもないよ〟の一点張り。なんでもないならまぁいいか、と特にそれ以上追求せずに、私も支度のためベッドを抜け出す。
昨日、この寝室に奇跡が起きて、突然キングサイズよりも大きなベッドが現れた。