才川夫妻の恋愛事情








会社に着いてエレベーターでオフィスフロアに上がると、喫煙スペースから出てきた竹島くんと鉢合わせた。



「なんだ才川夫妻。こんなぎりぎりのご出社なんて、昨日の夜も頑張ったのか?」

「……」



……相変わらずの、下衆……! 覚えのある絡まれ方にクラりとして、開いた口が塞がらなかった。才川くんは私を振り返って〝ほらな〟と言うような顔をする。結婚を公言したところでいじられ方は変わらないらしい。

私は竹島くんに言われたことを聞き流してそのまま更衣室へ向かおうと思った。だけど、足を止めた才川くんは動く気配がない。

……なんで立ち止まったの? 前のときとまったく同じ流れに、嫌な予感がする。訝しむ私の視線なんて無視して、才川くんは爽やかな笑顔で口を開いた。



「頑張ったよ。みつきがなかなか満足してくれないから超頑張った」

「おぉーやっぱ新婚は燃えるんだな」

「二人とも、やめてもらっていいですか?」



恥じらって見せるのも馬鹿らしくって真面目にたしなめる。こういう演技も前と変わらずやるんだ……と遠い目をしながら、思う。さっきの言葉は聞き捨てならない。



なかなか満足しなかったのは、どっちだ。



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